2010年6月12日土曜日

知りたくないの/I Really Don't Want to Know


知りたくないの/I Really Don't Want to Know

70年代エルヴィス・プレスリーのアルバムとしては、文句無しに受け入れることができた最初のアルバムが<エルヴィス・カントリー>だ。
 
 その目玉曲である<知りたくないの/I Really Don't Want to Know>は日本でも大ヒットしたC&W 。なかにし礼の詞 菅原洋一の歌で有名。どこのカラオケにもある。が、同じ曲とは思えないほど男臭さに満ちた熱唱をには胸の奥が熱くなる。

 歌詞が命のカントリーに、シンプルなメロディー。エディ・アーノルドの1954年の傑作<知りたくないの>も、そのひとつ。魂をこんがり焼く。

 エルヴィスはオリジナルの歌詞に引き裂かれたアンビヴァレンスな情念<両価感情>をぶつける。

 まず、いきなりOh,howにやられる。ワンコーラス目はしっとりと、されど、キスする姿を想像すると狂おしさが、歌詞にないYESが切なく、ラストコーラス、No Wonder year no wonderでは、心に落ちる大粒の涙が・・・うなだれて、立ち上がる男の背中を女はどう見るのだろう。

 泣き叫んでも、苦しんでも、すんでしまったこと・・・そこになにがあっても、どう解釈するかは、自分の選択・・・選択こそ自由だ。
 自由を得るための”イエス”に、<個の発見>ロックンロール文化が脈打っている。大いなる良心のもとにこそ、大いなる自由、”エルヴィス・カントリー”はその名の通り、カントリーと一線を画す。

 エルヴィス・プレスリーをカントリー・ミュージシャンと考えるアメリカ人に出
会ったことはないが、それでもエルヴィスは1966年、エディ・アーノルドと共に、カントリー・ホール・オブ・フェームに殿堂入りしている。

 尚、エルヴィスは、<知りたくないの>以外にも、エディ・アーノルドの曲から<Make The World Go Away> <How’s The World Treating You.><I’ll Hold You In My Heart ><Just Call Me Lonesome ><It’s Over ><It’s A Sin >などカヴァーしている。 いずれも絶品ぞろい。

余談だが、なかにし礼、菅原洋一の両氏が、<知りたくないの>をめぐって、それぞれの立場から自尊心を激突させて、一触即発の状態に陥ったとか。それほどまでに、心をとらえて動かした<知りたくないの>魅力は「人の本心」に届くからか。